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○眼球に入射する光が内部で散乱して、網膜像がぼやけてものが見えにくくなる現象を不快グレアと呼ぶ。水晶体の混濁などにより、高齢者ほど眼球内の光の散乱が起きやすく、それだけグレアに悩まされる度合いも大きい。視野の周辺に高輝度の視対象が存在すると、高齢者ほど眼球内に光の膜(べール)のような状況が発生して、視力が低下し、ものが見えにくくなる。
70〜80歳の高齢者が10〜20歳の若年者と等しい視力を確保するためには、視力検査表の輝度を約30〜40倍にもする必要がある(図5)。不快グレアについても同様に、高齢者ほど低い輝度でも不快に感じる傾向にある。

 

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○人間の視野は、加齢とともにまぶたの筋肉が垂れ下がり、特に上下方向の視野が若年者のそれよりも狭くなるといわれる。また、単なる見えだけの視野ではなく、視覚的な情報を収集できる有効視野も加齢により狭くなるといわれている。

 

○ものの存在の知覚は視対象とその背景の輝度の差の識別によるが、輝度の差や輝度の対比を弁別する能力は、加齢とともに低下する。例えば、60歳の人が視対象の存在を知覚するためには、20歳代の人に比べて約2倍の輝度対比が必要である。さらに、70歳、80歳になると、輝度対比の小さな視対象はほとんど見分けられなくなる。

 

○空間の奥行きや3次元の視対象を知覚する立体視の能力も、視力の低下なども手伝って、加齢により確実に低下する。

 

 

 

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